ハロウィンの悪魔



それだというのに目の前の男は視線を真っ直ぐに栞に向けたまま、怪訝な顔をするだけだった。



「お前が今泣いていることと、偽名使って正体を誤魔化してたこと、何か関係あるのか?」




ーー……は?

さらりと投下された爆弾発言に頭が真っ白になった。


あまりにもさらりと言うものだから、一瞬自分の頭がおかしくなったのかと思った程だ。


「…し、知ってた、の?」


か細い消えそうな声だった。

そんな声でもしっかりと聞き取ったのだろう、界斗は「ああ」と短く肯定した。


「いつから…」
「初めて会った時から。お前が隠したそうにしてたから、なんか事情があんのかと思って言わなかった」
「…う、そ…だってそんな素振り、一度も…」
「そうか?外で会ってた時、一度だって偽名で呼んだことはないと思うが」
「…!」


確かにそうだ。

会社ではいつも苗字で呼ばれていたのに、外では「お前」だったり「なあ、」だったりで一度も“シホ”と呼ばれた記憶は無い。







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