ハロウィンの悪魔
それなら初めからあの時の女が栞だと気づいた上で、ずっと接していたと言うのか。
今になって思えば思い当たる節は幾つもあった。
だとしたら、今まで自分が悩んできたのは一体なんだというのだ。
「〜っ、」
「!?おい、」
ボロボロとみっともない程に涙を流す栞に、界斗は明らかに慌てた表情を見せた。
「ご、ごめんなさ、私…っ」
ずっと、界斗は全部知った上で栞に好意を向けていてくれた。
それだというのに自分は、自分が傷付かないようにと己の事ばかりでずっと界斗の気持ちを蔑ろにしてきた。
なんて自分勝手で愚かなんだろう。
一体何度、目の前のこの人を傷つけてきたんだろう。
きちんと最初から向き合っていれば、あんなに悲しい顔をさせる事なんて無かったのに。
ーーこんな私に、この人を想う資格なんてない
「傷つけて、ごめんなさい…!」
もう何もかもが今更で、手遅れだ。
界斗の気持ちはもうとうに栞から離れているだろうし、既に終わった事を蒸し返すなんて自分勝手もいいところだ。
それでも謝らずにはいられなかった。