ハロウィンの悪魔






「あーっ…と…悪い。何に対して謝ってんのか分かんねえけど、とりあえず泣き止んでくれ」


戸惑いながらも暖かく大きな手で涙を拭われ、それがあまりにも優しい手つきだったから胸の奥が痛いほどに締め付けられた。


何に対してって、そんな事分かりきってるじゃないか。

そう言いたいのに喉の奥が灼けつくように痛くて上手く声が出せない。


「…っ、め、迷惑なんて言ってごめんなさい。本当は、全然そんな事思ってなくて……嬉しかったんです。こんな私を想ってくれて」


今更何を図々しい事を言おうというのかと嫌気がさしたが、頬に添えられた手があまりにも優しくて、我儘を許してくれるような気がして止まらなかった。


「本当の私はこんなだから、自分に自信が無くて…御堂さんの事信じられなくて、本当の姿を知られたら幻滅されるって思って…でも、」



ーー本当は、ずっと好きだった。


その言葉は言えなかった。

困らせる事を分かっていたから。
せっかく新たな恋を見つけたのに、その足枷になるようなこと今更したくない。








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