ハロウィンの悪魔
界斗へのどうしようもない愛しさが込み上げてくると同時に、苦しくもなった。
先程諦めてないと言っていたが、それならば後輩社員達が見た女性はなんだというのか。
「それなら…どうして他の女性と歩いていたんですか…?」
「なんの話だ?」
「噂で聞いたんです。御堂さんが綺麗な女性と歩いてたって…」
責めるつもりなんてないのに、どうしても責めるような口調になってしまう。
それでも界斗は気を悪くした素振りなど全く見せず、本当に分からないとばかりに首を傾げるだけだった。
「綺麗な女だったっつーなら、それ朝比奈じゃねえのか?」
「そんなはず無いですよ…」
「なら悪いが全く覚えがねえ。女連れて歩いたのなんて朝比奈しかいねえし、そもそも俺が綺麗だって思えるのもお前だけだしな」
どうしてそこまでこの人は自分を評価してくれるのだろう。
こんな何も取り柄のない女なのに。