ハロウィンの悪魔
蕩けるような甘い声に眩暈がする。
長く美しい指が赤い虹彩の宿る左目の瞼をなぞり、目尻を優しく撫でる。
大嫌いだった場所に大好きな手が触れている。
それだけで頭がおかしくなりそうだった。
誘われるように唇が寄せられ、静かに重なった。
触れるだけのキスは次第に深みを増し、時折漏れる互いの吐息だけが静かな部屋に木霊する。
長い口付けの後、ゆっくり離れた唇は名残惜しげに糸を引いていた。
酸欠になりかけとろんとした表情を見せる栞に、界斗の心臓はドキリと大きく跳ねた。
しかしその時ドアの隔たりの向こうから聞こえてきた社員の声に、咄嗟に目の前の細い体を勢いよく抱き寄せた。