ハロウィンの悪魔
「???」
加減はしつつも力強く抱き締められた腕の中で栞は混乱していた。
同時に外から漏れ聞こえる声に、ここが会社の会議室である事実を思い出して罪悪感と羞恥心でいっぱいになった。
早く仕事に戻らなければと思うが、強い抱擁は栞の細腕で多少押したところでピクリともしない。
そろそろ離して欲しい、そう声をかけようとしたところで先に声を発したのは界斗だった。
「…仕事が終わったら連絡してくれ」
「…え、」
「今夜は…一緒に居たい」
それがどういう意味なのかは聞かずとも分かる。
けれどお互いの気持ちをきちんと伝え合った今、拒む理由はもう何処にもない。
「…はい」
静かに肯定の言葉を口にし、最後にそっと界斗の背中に手を添えてその身を預けた。