ハロウィンの悪魔
栞へのアプローチの中ですげなく扱われても特に動じなかった。
友人の遥香が何年もかけて葉を落としにかかっていたのをずっと側で見てきたので、彼女に心奪われた段階でたっぷりと時間をかけていく事など想定の範囲内だったからだ。
初めての恋に溺れている自覚はあった。
けれどそれほどまでに鮮烈だった。
父の代理で出席したパーティの後、疲労感とストレスで立ち寄ったバーラウンジで、一人カウンターに腰掛ける栞の姿に一瞬で目を奪われた。
上質なワンピースから伸びた手足は細く長く、透けるように白い肌は彼女の品の良さを引き立たせていた。
興味のままに声をかけてその目を見た瞬間、これまでにない衝撃を受けた。
左右非対称のオッドアイ。右目は日本人特有の色だが、左目は血のように赤い瞳だった。
気付いた時には彼女を誘い、それを受け入れてくれた事により完全に舞い上がっていた。