ハロウィンの悪魔
そしてもう一つ、栞の頭を痛くさせている事がある。
「うわ、またか…」
静かな部署内で思わず声が漏れてしまった程だ。
とは言ってもその声は小さく、自分と同じように山のような仕事に追われている同僚達の耳には全く届いてはいなかった。
手元の一枚の書類。
営業部から提出されたその書類にまたも不備があった。
依頼者を見れば毎度同じ名前で、差し戻そうにも内容的に本日中には処理を終えなければならないものだった。
いつもならばこっそりと書き直し、栞自ら営業部長へ承認印をもらいに行く事もある。
ただそれを続けると本人の為にもならないし、何より前回この事がついに経理部長の耳に入ってしまって栞が注意を受けることになった。
今は猫の手も借りたいほどに忙しいが、仕方ないので直接手渡しに行くことにした。