ハロウィンの悪魔
「交際半年でプロポーズかあ。御堂くんて意外と手が早いよね、色んな意味で」
「はは…」
「葉くんもびっくりしてたよ。あの界斗が!?って。なんか取り憑かれてるみたいって言ってた」
「それは喜んでいいの?」
「いいんじゃない?しーちゃんが幸せなら」
遥香は栞の誤魔化しのない素顔を見ながら笑う。
界斗と付き合い初めてしばらくした頃から、栞は休日だけはカラコンを辞めた。
そうした方が界斗が嬉しそうだからと単純なきっかけだったが、栞にとっては何より大事な理由だった。
会社では相変わらずコンタクトを装着してはいる。
けれど目元を覆うほどの長さだった前髪は今は眉あたりで切り揃えられ、前より印象が明るくなったと同僚に褒められた。
劣等感が全て消えてなくなった訳ではないけれど、確実に以前よりは自分を大事に思えるようになってきていた。
その時、手元に置いてあったスマホが通知を知らせる音を鳴らした。
遥香に断りを入れてメッセージを開いて見た文面に栞は無意識に顔を綻ばせた。
その表情だけで誰からか察しがついたのだろう、遥香は可愛らしい顔でにこりと微笑んだ。
「良かったね、しーちゃん」
親友からの言葉に、この時初めて栞は心からの肯定の言葉を返した。