最強少女は男装幹部
 漫画のようなセリフを小声で私に告げたリンは、近くの壁の物陰にサッと隠れてしまう。

 あの心配性のリンのことだ。きっと、バレないように監視をするのだろう。

それで、何かやばそうな気配を感じたら、助ける手段を考える、と言う所だろうか。


 くっそ面倒臭いが、こういう時のリンを止めるのはあまり良い策ではない。

『なんで仲間なのに見捨てようとするの、、、?』と、ピュアな瞳で訴えかけられることだろう。

 もう化けの皮が剥がれてしまったが、リンは今だに私のことを善良な人間だと思い込んでいる。

それが都合上とても便利なので、リンの前では良い子ちゃんを演じさせてもらっている。


 だから、ここでまた本性を現しても、不利益に繋がるとしか考えられない。

ここでは『仲間を心配する良い子』を演じるのだ。

 どれだけ面倒臭くても、内心ざまぁと思っていても、そうするしか道はない。


 ついでに、私の一人称の件に関しては、触れないでいてくれる。

彼の中ではどう処理されているのだろうか。変な仮説が出来上がっていないと良いが。

 上の空状態ながら、リンと同じように影に隠れる。

二人で壁の隅に身を寄せて屈んでいると、すみっこぐ○しのような構図に見える。

ここが屋上付近でよかった。じゃなければ、誰かにこの奇行の様子を盗撮されていたかもしれない。

 百鬼夜行の縄張りというだけで人が寄り付かないなんて、前任の総長は何をしたのだろう。
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