最強少女は男装幹部

とある仮面を被った紳士

 シズルside

 本当に、昔から努力を重ねてきたと思う。

めげても立ち上がるのが、素晴らしいことだと思い続けて。

嘘は良くない、規律を守る人間が正しいと思い続けて。

 水をあげ続けても、花は開花しなくて。

結果を求められる社会に絶望した。

 
 どれだけ勉強をしても、学年一位には敵わず、万年二位だった。

足の速さも、大会に出ても三位だった。

皆をまとめようとしても、ヤクザの息子だと知られれば逃げられた。

優秀な兄たちに比べて、出来損ないの俺を身内は嫌った。

自分には才能がないと、心が折れそうになることは何回もあった。


 人生、何があるかわからないものだ。

 いい子を演じ続けて、自分の欲望を制御して。

邪(よこしま)な感情を持たぬように、世間の『偉い』を信じ続けた。


 その結果、裏で捻れ始めていた感情が、爆発してしまった。

しかも、中学三年生の受験期という大事な時に。

 勉強を辞め、父に勘当されかけたこともある。

 
 最後には柳家というプライドを捨て、底辺校へと入学を果たした。

そこでもう一度やり直そうと立ち上がり、暴走族に入った。

でも、それは間違いだった。

 喧嘩は出来たが、心がそれを許さなかった。

めげない頑丈な心が、悪になることを邪魔した。


 酒を飲まない。タバコを吸わない。バイクは免許を取ってから。

法律を守り、高一の誕生日に買った原付は、小さいと馬鹿にされた。
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