最強少女は男装幹部
 そうだ。忘れていた。

彼は俺が生きて来た人生の中で、一番恐ろしい人間だったのだ。

兄達にも敵わない、妖艶ながらも恐ろしい冷たさを放つ才能。


 初めて彼が屋上に入って来た時、『恐怖』を覚えた。

この世にいて良いのかすら定かではない、異質な問題児。

 その溢れ出る重たい雰囲気に、怯えてしまったのだ。

彼はジンよりも格上だと、直感的に悟った。

 恐ろしい程の美貌に、才能に、異質さに。

 俺は、嫉妬した。


 またもや一番にはなれないと、絶望した。

やっと副総長にまでなったと思っても、こいつに蹴落とされる。

次の王は、こいつになる。

 人を見破るのに肥えた目は、そう告げた。


 それを今、強制的に思い出された。

彼には全て見透かされている、そう思ってしまった。

自分は負けたと、認めてしまった。
< 137 / 230 >

この作品をシェア

pagetop