最強少女は男装幹部
 足音を消して、スタスタと歩く。

 日和ることなく進んでいくと、男の背中が見えてきた。

目を凝らして見てみると、四人の男が固まっていた。

背後に人がいると気がつかない、マヌケどもだ。


「見ろ。クスリを売っただけで、こんなに稼げちまったぞ」

「いやぁ。もっと早くにやっとけばよかったなぁ」

「そうだ。これから焼肉でも食いに行こう」

「あぁ!そうだ、、、て、誰だお前!?」
 
 札束を広げる男たちを、横からヒョイっと覗く。


 高揚していた口調からは一変。男たちの顔は真っ青になった。

信号機みたいな男たちを見て、吹き出しそうになる。

こういう滑稽な人間の顔は、嫌いじゃない。

 
「あれ?不正な方法でお金稼いだら、逮捕されちゃうよ?」

 低い声を出しながら、被っていたフードをグイッと押さえつける。

ここでも男の振りをする。男と言うだけで舐められなくなるなんて、都合が良い話だ。


 男たちは、メドゥーサにでも睨まれたかの様に固まってしまった。

脚が竦んでおり、ガタガタと歯をカスタネットの様に鳴らしている。

なぁんだ。弱っちい大学生か。つまんないの。

 心踊る血しぶきを想像していた私は、思わず溜息をついてしまう。
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