最強少女は男装幹部

とある歪な線と天邪鬼

 
 9月も過ぎ、10月へ差し掛かった朝。

少し肌寒い澄んだ空気が、心に空いた穴を通り抜ける。

 意気消沈、二週間目。

リンに隠れて酒を飲む量が増え、それだけ罪悪感も色を増した。


 そして、何を思ってか、今私は美術室の前にいる。

落書きが施された個性的な扉の前で、立ち尽くす。

今まで無心で歩き続けていたが、なぜこんな所に来たのだろう。

 絵なんて、もう捨てたはずなのに。


 懐かしさを覚えたのか、衝動的にここへ足が動いていた。

今頃、リンは校舎中を走り回って私を探しているだろう。

戻らなければならない。心配をかけてはいけない。


 そんな心とは正反対に、体は勝手に扉に手をかけていた。

そしてスライド式の扉を開け、中へと慎重に足を運ぶ。

 美術室特有の、木材と絵の具の匂いが鼻を掠める。

懐かしい。匂いは記憶を鮮明に引き連れてくる。

 授業もろくに出ていないものだから、全てが懐かしく感じる。
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