最強少女は男装幹部
 複数のキャンバスに、絵の具で固まった筆。

時間が経った油絵具は、色取り取りに床に付着している。

カーテンから漏れる日差しは、大量の埃に反射して輝いていた。


 おお、と感嘆を漏らしながら、一つのキャンバスの前で止まる。

真っ白で、何の物語も無いキャンバス。

 ここに、自分の物語を落とし込める気がした。

懐かしい幼心を、もう一度見たい情景を。


 気がつけば散らばった椅子を引き寄せて、筆を手に持っていた。

誰のかもわからない細く尖った鉛筆に、筆と絵の具。

 あとは何が必要かは知らない。もっと何かあるのだろうが、これで何とかなる気がする。


 そこから暫くの事は覚えていない。

ただ一心不乱に筆を動かして、理想を固めた。

赤、橙、黄などの暖色系の色を重ねていく。

 油を混ぜ合わせて、色を重ねて。


 道具が足りないのか、技法が間違っているのか。

少し歪で汚い。乾くまで待てないせいで、濁ってしまう。

それでも、狂った様に塗り続けた。
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