最強少女は男装幹部
 俺に飴を渡しながら、アカネがそう諭す。

思った以上に、優しい声だった。

正直言って、こんな声を出す人がスパイだとは思えない。


 「、、、ありがと。でも、自分が地獄に落ちてでもアイツを引き摺り下ろしてやりたい」

馬鹿で安直な脳みそを持つ俺は、それくらいしか方法を見出せなかった。

 もっと賢かったら、恨まずに前を向くのだろう。

しかし、未練タラタラな俺は後ろばっかりを気にしている。


 後ろから襲われても大丈夫なように、喧嘩を覚えた。

なのにも関わらず、いまだに前を向けていない。

 相変わらず、俺は彼のことをずっと悪魔だと思っている。


 「アイツは、俺よりも弱い筈なのに、、、」

中学生になってから、性格は捻くれていった。

もう虐められないように、舐められないようにとそれだけに気を使った。

そのせいで天邪鬼になり、ただの煽り散らかして来る面倒な奴になった。


 舐められないように、舐めるしかない。

殺される前に殺す、みたいなものだ。

弱者は踏み台に、強者は王座に。それが俺の中に定着していった。
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