最強少女は男装幹部
 リンの成長に、ただただ感動した。

彼は、ようやっと部屋の隅から抜け出せたのかもしれない。

自分の為に、仲間の為に、勇気を振り絞った。

 情けない威嚇だ。弱者の遠吠えの様な。

それでも、彼は成長した。一歩を確実に踏み出した。

 
 しかし、効果は薄い様だ。

飯田は怯むどころかさらに苛立ち、唾を撒き散らしながらリンに言い返す。

 「は?んだよチビ。弱っちそうな癖によ!」

 涙が溢れそうになっているリンに詰め寄り、野生生物の様に暴れる。

そして、リンの胸倉を掴もうとする__

 「おい。」

 「ひぃ!?」

 自分でも驚いた。反射的に出た、今までで一番低い声。

 堪忍袋の尾が切れた、とでも言うのだろうか。

それ以上リンに触ったら、容赦しないという感情が湧き上がってくる。

母の時よりも、義母の時よりも、父の時よりも。確かな殺意が湧いてくる。

 「それ以上彼に触るな。さもなくば、、、」


 飯田に近づき、皆には見えない様に手元を体で隠す。

そしてゆっくりと鋭利な刃物をポケットから取り出し、彼の腹に軽く突き立てた。

 「もっと力を入れても良いんだぞ?」

 彼が来ている制服に少しだけ刃を立て、偽物ではないと無言で告げる。

 最初の頃から、万が一のために持ってた護身用のナイフ。

それがこんな形で役に立つとは、思ってもいなかった。
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