最強幹部のアカネくん、実は女の子

とある深海に一筋の光を

 線を引き、色を重ねる。

過去の過ちは塗り潰せない。だからこそ、生かす必要がある。

 「アカネは凄いね。僕は絵の事なんて分かんないや」

 「私も殆ど感覚で描いてるから、分かんない」

 「金賞を獲った人が言う事かな?」

 
 私の彼氏となった人が、隣で微笑んでくれる。

くん付けはなくなり、恋人らしく『アカネ』と呼んでくれる。

それがとても嬉しく、愛おしい。


 目の前には豪華な額縁に飾られた、深く昏い海の絵画。

冷たい深海の中で、一筋の光が輝いている。

私が描いたものだ。まさか、金賞を獲るとは思ってもみなかった。

 後悔の海の中、私にとっての一筋の光は、きっと隣に立つ少年だったのだろう。


 三年生になり、少し成長した。

百鬼夜行を抜け、少し寂しくなった。

母を恨む事は辞め、誠実に生きていく事にした。

変わる事もある。変わらない事もある。

 そんな中、君との愛情だけは変わらない気がした。

 「なんか、急にハンバーグ食べたくなった」

 「じゃあ、行こっか。今回はカズキも誘って」

 「うん。楽しみ」


 お母さん、見ていますか?

私はとても罪深き事をしました。

そのせいで、一度海に溺れかけました。

それでも、今の私は幸せです。

 だから、安心してください。もう、光は見つけましたから__
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