最強少女は男装幹部
 手に握った鍵を、慣れた様子でカギ穴に刺す。

そして軽やかな動きでクルッと手首を回し、見事解錠に成功する。

 ガチャっと小気味の良い音がなり、扉が開いたことを実感させた。


 そっとドアノブに伸ばした彼の手が、扉を勢いよく押す。

ギギッと甲高い悲鳴をあげながら、重そうな扉が開かれた。


 その瞬間、私たちに向かって吹いてくる、心地よい風。

その正体は夏の気配を含む、緑葉の匂いを乗せた春風だ。

 空は青く澄み渡っており、紺碧色が天色とグラデーションに混じりあっている。

雲は一切なく、綺麗にドーム状に貼られた壁紙のようだ。

 誰かが綺麗に塗り潰したかのような空は、開放感で満ちている。

 こんなに近く見える空が、遥か彼方まで続いているとは思えない。


 空を見上げ、眩く光を発する太陽に目を細める。

いままで青空を見上げる事もなく、夜の星のない空ばかりを眺めていた。

 瑠璃色に深く沈む空とは、大違いだ。


 久しぶりの青空に、どこか感動している自分がいた。

こんなに綺麗なスポットが立ち入り禁止だなんて、勿体ないものだ。

 もっと、早くに知っておけばよかった。

 弱く吹く心地よい風を頬に当てながら、小さく後悔をする。

 広大で濁りのない空は、私の心を浄化してくれる気がした。
< 61 / 230 >

この作品をシェア

pagetop