最強幹部のアカネくん、実は女の子
 何故真冬なのにも関わらず、薄着で出たのか。

相変わらず、目は虚ろなままだったのか。

 考えれば、可笑しい所は沢山あった。

しかし私は嬉しさのあまり、そんなことにも気がつけなかった。


 結局、母はいつまでも帰って来なかった。

 何処かのビルの屋上から、飛び降りたらしい。

近くにあった買い物袋の中には、出来合いのハンバーグが入っていたと聞く。


 葬式の時、私は涙を流さなかった。

極度のショックか、理解できていなかったのか。

はたまた、どちらもかもしれない。


 私は、独りで死んだ母を恨んだ。

なぜ私と心中しなかったのか。生きようとしなかったのか。

 彼女は私を見捨てた。

その事実に気がついた途端、憎悪が私に芽生えた。

今まで、私の中には淡い期待があった。
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