最強少女は男装幹部
 他の人からすれば、何故そんなに傷つく?と言われてしまうだろう。

 でも、僕からすればとても重大なことだった。


 孤独の中、狭い部屋の隅で泣いていた幼き僕を救ってくれた。

止まっていた時が、動き出したようだった。

 両親の怒鳴り声を背に、涙を流しながら寝ていた僕。

両親喧嘩は幼い頃から続き、悪い日は僕も殴られた。

 
 だから、眠ることで逃げることにした。

眠って、何も知らないまま朝を迎える。

ランドセルを背負って、学校へ行って、安全な日々を過ごす。

 それが、唯一僕が編み出した逃避法だ。


 両親が離婚し、口喧嘩がなくなった今なお続けている逃避法。

 僕を引き取った母が、今日まで愛情を注いでくれたことが一度もなかったことも。

 誰かに見て欲しくて、夜の世界に入ってみたことも。

 入った高校で、早々孤立してしまったことも。
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