追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
次第に顔に血色も戻ってきたレイビス様を目にして、とめどない安堵が体中を駆け巡る。

もう本当にダメかと思った。

命の瀬戸際で、治癒魔法が発動したのはまさに奇跡だ。

おそらく口づけによって発動したのだろうが、なぜ一回目では反応せず、二回目で成功してのだろうか。

その辺りに疑問が残るものの、レイビス様は確実に癒されているので今は一旦棚に上げておこう。

「す、すげぇな……」
「すごいですね……」

背後から騎士団長様とサウロ様の驚きに満ちた声が漏れ聞こえる。

当の本人であるわたしも初めて見るこの光景に驚きを隠せないのだ。治癒魔法をよく知らないお二人から見ればきっと驚愕の事態だろう。

虹色の光はレイビス様の回復に呼応するように徐々に小さくなっていく。

そして最後に一際明るく輝くと、わたしの手のひらに吸い込まれるようにその光を消した。

光が収まった今、わたしの手には確かな治癒魔法の反応を感じる。

これは兆しではない。
以前のように自分のチカラとしていつでも使える状態だと本能で感じた。
 
 ……治癒魔法を完全に取り戻したようだわ。

レイビス様の取り組んでいた研究が、今ここに実を結んだ瞬間だった。

考察は必要だろうが、結果は出たと言えるだろう。

不思議な現象にわたしは思わず自分の手をまじまじと観察してしまう。

「……ティナ」

その時ふいに名前を呼ばれ、わたしは急いで声の方へと視線を向ける。

そこには先程まで瀕死の重体だったのが信じられないほど回復したレイビス様の姿があった。

まだ横たわったままだが、声がしっかりしているし、目にも力がある。

その生気に満ちた姿を見たら、安堵感から泣きそうな衝動が喉元からせり上がってきて、二の句が継げなくなった。

「レイビス!」

「団長……!!」

レイビス様が目を覚ましたのに気づいた騎士団長様とサウロ様が傍へ駆け寄ってくる。

二人も安堵と喜びがごちゃ混ぜになったような表情を浮かべ、長い息を吐き出した。

「すまない、皆には迷惑をかけた」

「心配しただうがよ! 無事でよかったぜ」

「本当に、寿命が縮みましたよ。ご無事でホッとしました」
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