追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
レイビス様はゆっくりと体を起こしながら、自身の体の状態を見極めつつ、お二人へ戦況の確認をし始めた。

治癒という役目を終えたわたしは邪魔をしないようにと思い一歩下がろうとする。

だが、突然手が伸びてきてレイビス様に肩を抱かれて阻まれてしまった。

 ……えっ⁉︎

すっかり全快したレイビス様の腕は力強い。思わぬ行動にびっくりしつつも、回復を喜ぶ気持ちの方が優った。

「二人には取り急ぎ報告しておきたい。実は私が危機に陥ったのは、サバラン帝国の思惑だったと思われる。不覚だが仕掛けられた」

騎士団長様とサウロ様もそんなレイビス様の行動に瞠目していたが、なにごともなかったかのようにレイビス様が話を続けたため指摘できなかったみたいだ。

しかも語られる話は極めて重要度の高いものであり、二人は再び目を見開く。

「なんだと⁉︎」

「本当ですか⁉︎」

「ああ。犯人はミラベル嬢。間違いなくサラバン帝国の手の者だ。そんな彼女に魔物寄せの匂いを付けられたらしい。そのせいで魔物が私を集中的に襲ってきたというわけだ」

「強大な魔法を使えるレイビスがなんで魔物にやられたのか不思議だったが、そーいうことかよ!」

「もしや本日の面会の際に⁉︎ あ、確かに最後に……! あれはそういう狙いか!」

機密性の高い情報をわたしなんかが聞いてしまってよいのかと及び腰になるが、耳に入ってきた話は信じられない内容だった。

 ……ミラベル様が⁉︎ 治癒魔法が使えなくなった時の状況からも怪しさは多少あったけど……?

とはいえ、彼女は人を治癒する立場の人間だ。仮にも聖女である人物が、魔物に人を襲わせ害そうとするだろうか。

ただ、レイビス様は確信しているようで、サウロ様もなにか心当たりがあるようだった。

「これは私の推測だが、おそらく大規模魔法を使える私を亡き者にして戦力を削ぐのが目的だったのだと思う。そしてスタンピートに次いで、次の手も用意しているはずだ」

「スタンピートは序の口にすぎないってか」

「厄介で執念深い国ですね。団長は次の手にも予想がついているんですか?」

「ああ。たぶん鍛えられた騎士達で組織した軍隊だろうな。魔物の襲撃で被害を受けたフィアストン領を一気に攻め立てる心づもりだろう」
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