追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
話を聞いているだけで、その恐ろしい計画に身震いする。

そんな状態になれば、わたしの故郷の村のように、この平和な街は無惨に蹂躙されてしまうかもしれない。

「そうなる前に敵国の計画を挫く。幸い、王都からの増援が早かったことでスタンピートは随分押さえられているようだ」

「ああ。今のところ最小限の被害で済んでいる」

「この辺りの魔物もかなり駆逐しました」

「次の手を繰り出すのを躊躇わせるくらい、一気に魔物を片付けてしまおう。私も大規模魔法で応戦する」

「レイビス、お前大丈夫なのか?」

「そうですよ。団長はまだ安静にされていた方が……」

「問題ない。もう全快だ。魔物寄せの匂いも消えている上に、魔力量まで全回復している。……ティナのおかげでな」

そう言うと、レイビス様は静かに隣で佇むわたしにチラリと視線を向けた。

急に名前を出されて反射的にビクリとしてしまう。

「……私は少しティナに話があるから、先に他の戦闘員に今の件を情報伝達してくれないか?」

レイビス様からの頼みを受けたお二人は、二つ返事で快諾すると、その場を去っていった。

それにより急にこの場にレイビス様と二人きりの状態になる。

治癒のためとはいえ、先程勝手に口づけをしたこともあり、少し気まずい。

「ティナ、改めて礼を言う。危ないところを助けてくれて感謝している」

「レイビス様がご無事で本当によかったです。賭けに近い行動でしたが、奇跡的に土壇場で治癒魔法が発動しました」

「その治癒魔法だが、今はどんな状態なんだ?」

「元通りです。再びチカラを使えるようになりました。レイビス様の研究が成功したということです」

「それはよかった。……ちなみにティナはなぜ治癒魔法が発動したか、その理由には検討がついているか?」

「いえ、それがわからなくて……」

先程棚に上げた疑問をレイビス様は指摘してきた。もしかしてレイビス様は研究心をくすぐられているのだろうか。

そんなふうに思っていた私だったが、その予想は外れる。次にレイビス様が意外な言葉を口にしたからだ。
< 107 / 141 >

この作品をシェア

pagetop