追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「私はすでに考察を終らせ、ある理由を導き出している」

「えっ?」

どうやらレイビス様は回復してから今までのごく短時間で考えをまとめてしまったらしい。

「ティナ、君は私に好意を抱いているのだろう?」

「ええっ⁉︎ あの、その……⁉︎」

どんな考察を教えてもらえるのかと思えば、いきなり秘めた想いを見破られ、わたしはたちまち大混乱に陥る。

顔を真っ赤にして、目を泳がせた。

「隠そうとしても無駄だ。私に対するティナの好意がなければ治癒魔法は反応しないままだっただろう。……おそらく再発動の条件は、お互いを愛しく思う者同士が口づけを交わすことだ」

サラリと告げられた台詞が一瞬どういう意味かわからなかった。解釈が追いつかず、ぽかんとしてしまう。

そしてようやく言葉を咀嚼できると、今度は淡い期待に胸が早鐘を打つ。

 ……そ、それって、もしかして……? えっ、でも本当に……?

ドキドキと脈打つ鼓動を感じながら、その答えを問うようにわたしはレイビス様を見上げた。

「あ、あの。それって……」

「つまり私もティナに好意を寄せているということだ。意識が一瞬戻った時に君を見て、その想いが強く現れた。それが発動の引き金になったのだろう」

そう説明すると、レイビス様の端正な顔が近づいてきて、瞬く間に唇を塞がれた。

確かな温かさを感じる口づけは、胸に込み上げてくるものがあり、わたしはなんだか泣きそうになる。

レイビス様が生きている「安堵感」、助けられてよかったという使命を果たした「達成感」、そして好きな人に同じ気持ちを返してもらえたという「幸福感」。

さまざまな感情が入り混じり、体が震えるほどの喜びがこみ上げる。

魔物が蠢くこんな危険な場所だというのに、わたしは胸に広がる甘いときめきにしばしの間酔いしれずにはいられなかった。
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