追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
自問自答して導き出した答えに心の中は大騒ぎだ。ますます頬が赤く染まる。
 
幸いにも魔物討伐は順調なのか、先程からパタリと怪我人が運び込まれてくるのは止まっていた。

自分の手に余る事態にわたしがてんやわんやしていても、許される状況だったのは幸運であった。


◇◇◇

それから一時間も経たないうちに、騎士団と魔法師団の尽力あって、スタンピートは無事に終息した。

治癒魔法での援護の甲斐あって、この戦いによる最終的な負傷者はゼロだ。

全員が五体満足の状態で怪我一つなく、ピンピンしている。仮に今から敵国が攻めてきても十分応戦できる戦力だった。

「ティナのおかげだ。本当に助かった」

戦いを終えて戻ってきたレイビス様は、真っ先にこちらへ歩み寄ってくると、わたしに感謝の言葉を口にした。

レイビス様の纏っているローブはところどころが破れており、楽な戦いではなかったのだろうことが窺える。

特に魔物寄せによって瀕死の重症になり、一時は命の危機だったのだ。

立場ゆえの重圧も背負いながら無事に戦いを終結に導き、フィアストン領を守り切ったレイビス様はきっと万感の思いだろう。

「俺からも礼を言う。怪我を負った部下達を治癒してくれてありがとう」

続けて騎士団長様からも頭を下げられた。

レイビス様が危機の時には悲愴な表情だった彼も、今は明るい雰囲気を漂わせニカッと男らしい笑みを浮かべている。

周囲の騎士様や魔法師様も喜びを顔に、思い思いに勝ち鬨を上げていた。

今にもお酒をたらふく飲みたいと言わんばかりの祝勝ムードだったが、それをたった一言でピシャリと引き締める者がいた。

レイビス様だ。

「だが、まだサラバン帝国との決着がついたわけではない」

その言葉に誰もがハッと目を見開いた。

一気にその場には静寂が訪れ、緩んだ雰囲気は再び緊張感を取り戻す。
 
「本当の意味で国家に安寧をもたらすため、私達は次の行動に移らねばならない」

重々しい口調で紡がれた使命感に溢れるその台詞は、皆の目に闘志を灯らせた。

真剣な表情になった団員達を見渡すと、次にレイビス様は次々と指示を出していく。
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