追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
なにか異変を感じたら教えてほしいと言われていたわたしは、すぐにレイビス様に小さな声でこそっと報告する。

大広間は大混乱に陥っているため、わたし達が中に入ってきたことを誰もまだ気がついていないようだ。

「もしかすると教会もサラバン帝国と通じていたのかもしれないな。スタンピートが起こるのを予め知っていて、あえて神官達を不在にさせ、治療ができないようにした可能性が高い」

レイビス様によると、ここ半年ほど国境を行き来する教会の人間が多いそうだ。

その事実からかなり黒に近いと踏んだでいたらしく、今目の前の状況でさらに確信が深まったという。

騎士団長様とサウロ様も改めて教会に対する警戒を高めているようだ。

「どうやら教会の人間はあの二人しかいないようだ。一気に取り囲んで二人共を拘束する」

「あ、レイビス、お待ちください……! ミラベル様と一緒にいるのはニコライ様という神官で、わたしにとてもよくしてくださった方なのです。できればニコライ司教の拘束はおやめいただかませんか……?」 

「わかった。ミラベル嬢を拘束、神官には話を聞くこととしよう」

「ありがとうございます」

いくら教会が敵の手に堕ちていようとも、ニコライ司教はそこに加担していないとわたしは確信していた。

だからレイビス様が配慮してくれてホッとする。

 ……ともかくこの状況についても話を聞く必要があるわね。そして可能な限り早く治療にあたらなければ……!

本当は今すぐにでも治癒を始めたい。

だけど今回ここに来た一番の目的は、ミラベル様を捕縛することだ。

それを遂げてからでないと治癒もままならないだろう。

「よし、拘束だ」

「おうよ!」

「周辺警戒はお任せを!」

レイビス様の一声を合図に騎士団長様が迅速に動き出し、サウロ様は二人をフォローするように立ち回り始めた。

「ミラベル嬢、身柄を拘束させてもらう。悪事を洗いざらい話してもらおう」

「えっ、レイビス様! どうしてこちらに⁉︎ それに身柄を拘束ってなにごとですの⁉︎」
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