追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
◇◇◇

「では洗いざらい話してもらおうか。お前がサラバン帝国と通じることになった経緯や、実際に手を汚してきた悪事をな」

厳かな雰囲気が漂う礼拝堂に、レイビス様の冷ややかな声が響き渡る。

さほど大きな声を出していないにもかかわらず、わたし達以外誰もいない静寂に包まれた空間にはよく響いた。

この場にはレイビス様、騎士団長様、ニコライ司教、わたし、そしてミラベル様の五人しかいない。

ミラベル様は騎士団長様に拘束されたまま、床に膝をついている。一方、わたし達は立っているので、ミラベル様を見下ろしている状態だ。

神が見守る神聖なこの空間では、嘘は許されないとばかりにレイビス様はミラベル様を冷酷に睨みつけていた。

だが、残念ながらミラベル様の開口一番の言葉は『否定』だった。

「サラバン帝国など知りませんわ! あたくしはなんの関係もありませんもの。悪事とおっしゃいますけど、なんのことですの⁉︎」

「はぁ。この期に及んでこの態度か」

「本当ですもの、信じてくださいませ!」

「では問うが、お前は私に魔物寄せの匂いを付け、亡き者にしようとしたではないか。私が気づいてないとでも?」

「な⁉︎ 酷い誤解ですわ! あたくしがレイビス様にそんなことをするはずがございません!」

まずはレイビス様が瀕死の重症を負うことになった件を追求するようだ。レイビス様がじっと鋭くミラベル様を見据えながら問う。

だが、ミラベル様はまるでなんの話かわからないと言うような顔で再度強く否定を述べた。

「本日の面会で纏っていた香水、あれがそうだろう? あの匂いを去り際に私に付けてきたのを忘れたのか?」

「あ、あれは……」

ところが、香水について言及されると、途端にミラベル様の様子がおかしくなる。

先程までの強気な態度がなりを潜め、目をキョロキョロさせ始めた。明らかな動揺に誰もが疑いを深める。

「言い逃れはさせない。実際に私はあれのせいで瀕死に陥ったからな」

「えっ⁉︎」

「今私がここにいるのはさぞ不本意だろう。作戦が失敗して悔しいだろうな」

「そんな、そんな、違います! あたくしはただ……」

「香水の入手経路や、サラバン帝国に指示されていた作戦を吐いてもらおうか?」
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