追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
見覚えのあるそれは、おそらく宮廷魔法師団のものだ。
ミラベル様が聖女に就任する以前、わたしが貴族を相手に治癒していた頃に見たことがある。
……宿屋のご主人が言っていた通りね。確かにこの方は貴族だわ。
服装でそう思ったわけだが、それだけではなく佇まいからも、男性が高貴な身分であることは明らかだった。
だが、見覚えがあるのはローブそのものだけで、この男性とは初めて会うはずだ。
これほど目を引く容姿端麗な男性であれば、さすがのわたしも覚えていると思う。
「お前がティナか?」
「……どちら様でしょうか?」
男性はわたしを訪ねてきたはずなのに、わたしにわたしがティナであるかどうかを問うてきた。
やはり初対面であるのは間違いないようだ。
「私はレイビス・フィアストンだ。宮廷魔法師団で団長を務めている」
「…………もしかしてここフィアストン領を治める公爵家のご子息様、ですか?」
「そうだ。普段、私は王都にいるけどな」
男性はこともなげにサラリと述べたが、わたしは相手が誰かを知り目を見開いた。
相手が思った以上に大物だったからだ。
……宮廷魔法師団の団長といえば、稀代の天才だと名高いエリートだわ。しかもわたしでも知っている、あのフィアストン公爵家の嫡男……!
フィットモア王国には王家の次に力を持つ二大公爵家が存在する。
それが『フィアストン公爵家』と『ラシュート公爵家』だ。
この二大公爵家が、王国内でも特に重要な土地である『王都』と『国境領』を守護している。これは平民にも広く知られている一般常識だ。
フィアストン公爵家は隣国に睨みを効かせつつ王国の玄関口である国境の地を守り、ラシュート公爵家は宰相を務めるなど内政面から王家を支え、王都を守っていると言われている。
……そんなフィアストン公爵家のエリート魔法師団長様がなんでわたしを訪ねて来たの?
あまりにも予想外の事態に、わたしは目を瞬かせた。
「とりあえず、お前も座ったらどうだ?」
「えっ? あ、はい。それではお言葉に甘えて失礼いたします……」
ミラベル様が聖女に就任する以前、わたしが貴族を相手に治癒していた頃に見たことがある。
……宿屋のご主人が言っていた通りね。確かにこの方は貴族だわ。
服装でそう思ったわけだが、それだけではなく佇まいからも、男性が高貴な身分であることは明らかだった。
だが、見覚えがあるのはローブそのものだけで、この男性とは初めて会うはずだ。
これほど目を引く容姿端麗な男性であれば、さすがのわたしも覚えていると思う。
「お前がティナか?」
「……どちら様でしょうか?」
男性はわたしを訪ねてきたはずなのに、わたしにわたしがティナであるかどうかを問うてきた。
やはり初対面であるのは間違いないようだ。
「私はレイビス・フィアストンだ。宮廷魔法師団で団長を務めている」
「…………もしかしてここフィアストン領を治める公爵家のご子息様、ですか?」
「そうだ。普段、私は王都にいるけどな」
男性はこともなげにサラリと述べたが、わたしは相手が誰かを知り目を見開いた。
相手が思った以上に大物だったからだ。
……宮廷魔法師団の団長といえば、稀代の天才だと名高いエリートだわ。しかもわたしでも知っている、あのフィアストン公爵家の嫡男……!
フィットモア王国には王家の次に力を持つ二大公爵家が存在する。
それが『フィアストン公爵家』と『ラシュート公爵家』だ。
この二大公爵家が、王国内でも特に重要な土地である『王都』と『国境領』を守護している。これは平民にも広く知られている一般常識だ。
フィアストン公爵家は隣国に睨みを効かせつつ王国の玄関口である国境の地を守り、ラシュート公爵家は宰相を務めるなど内政面から王家を支え、王都を守っていると言われている。
……そんなフィアストン公爵家のエリート魔法師団長様がなんでわたしを訪ねて来たの?
あまりにも予想外の事態に、わたしは目を瞬かせた。
「とりあえず、お前も座ったらどうだ?」
「えっ? あ、はい。それではお言葉に甘えて失礼いたします……」