追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした

21. 真犯人との対峙(Sideレイビス)

「まさかミラベル嬢の背後に侍女がいたとはな」

「ああ、盲点だった」

「侍女は何者だと思う?」

「十中八九、サラバン帝国の工作員だろうな」

ミラベル嬢が連行された後、私とリキャルドは今しがた発覚した事実について意見を交わす。

先程まで一緒だったティナと司教は、大広間に怪我人達の様子を見に行っているため、この場には私達二人だけだ。

先程のミラベル嬢の告白を聞くまで、件の侍女は全くのノーマークだっただけに、私もリキャルドもこの真相に意表を突かれていた。

 ……ミラベル嬢が無自覚に実行犯になっていたとは。サラバン帝国はなかなかいやらしい策を講じてくるな。

ミラベル嬢に疑いを向けさせることで、自分は影に隠れる作戦だったのだろう。

侍女がミラベル嬢を使って実行した二つの工作――私を魔物に襲わせたこととティナから治癒魔法を奪ったこと――を鑑みれば、侍女は敵国の工作員だと考えられる。

サラバン帝国が我が国を侵攻するにあたって魔力量の多い魔法師と聖女は邪魔になるからだ。

 ……実際その作戦はほぼ成功していたしな。ティナに治癒魔法が戻っていなければ私は今ここにはいない。敵の思惑通りだっただろう。

ティナがあの瞬間にチカラを使えるようになったのは奇跡以外の何物でもないと思う。

あの一瞬だけ目が覚めた時、朦朧とする意識の中、私は突如ある可能性に思い至った。私がティナを想っていると自覚した今なら、口づけで何か新たな反応が得られるのではと。

あれほど糸口が掴めなかった考察が嘘のように脳裏に浮かんだ。今思えば、それは今際(いまぎわ)の閃きだったのかもしれない。

身体的な接触に加え、きっと『心』も重要な要素なのだろうと半ば確信を持って、意識が途切れそうになりながらティナへ口づけを促したのだ。

その結果、奇跡は起きた。
同時に双方が同じ気持ちで口づけすることが鍵だったのだと悟った。

つまりティナも私を想ってくれているのだとわかり、虹色に光に全身を優しく包まれる中、怪我が治癒されるだけでなく、私は心まで満たされていくのを感じた。
< 120 / 141 >

この作品をシェア

pagetop