追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
ティナが要望を述べるとは珍しい。
しかも私を引き留めてまで。
 
「理由を聞いても?」

「ラモン先生達のおかげでこの場は落ち着いてきたので私は動ける状態です。一緒に行けば、レイビス様や騎士団長様にもしなにかあった時にすぐ治癒ができます。それに……ミラベル様を背後で操っていた侍女の真意を知りたいのです。私も無関係ではありませんので」

「……わかった、同行を認める。だが、必ず私達から離れず勝手な行動はしないと約束して欲しい」

「もちろんです! ありがとうございます……!」

私が同行を許可したのは、ミラベル嬢が連行される時のティナの翳りある表情を思い出したからだった。

ティナも今回の件で被害を被っているので、侍女から真相を聞くまではまだ燻る思いがあるのだろう。

その後、リキャルドと私とティナの三人は瞬間移動魔法で侍女の逃亡先へと移動した。

場所は先程まで魔物との戦いを繰り広げていた荒野だ。そう、侍女は国境を越え、サラバン帝国へ帰還しようとしていたのだ。

荒野ならば先程一度行っているので一瞬で飛ぶことができる。私達は一人で馬を駆って逃げる侍女の前に躍り出た。

「なっ、なぜここに……⁉︎」

突然現れた私達の姿に侍女は驚愕し、体勢を崩しながら馬を静止させる。

その隙をついて、私が拘束魔法で相手の動きを封じ、リキャルドが侍女に近づいて馬の上から引き落とし身柄を取り押さえた。

乗り手を失った馬はどこか遠くへ駆けて行く。移動手段も無くなった今、もはや侍女には逃げる術はない。

「私が生きていて驚いたか? 残念だったな、魔物に襲わせて亡き者にする企てだっただろうに」

「くっ……。上手くいったと思ったのに。そもそもどうやって私がここにいると分かったの⁉︎」

侍女はすべての悪事がこちら側に露呈している事実を悟ったようだ。だが、拘束されながらも、今だに憎々しげに私を睨み上げてくる。
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