追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「場所を探り当てるのは簡単だ。私の探知魔法は使い勝手が良いからな。お前の魔力はミラベル嬢と面会した時に覚えておいた」

教会を出たティナがフィアストン領のどこにいるか探り当てた時と同じ手法だ。

私にとってはごく使い慣れた魔法である。だが、敵国の工作員には想定外の事態に違いない。

「そんな魔法まで使えるとは……。やはり我が国王陛下が侵攻において障害になる者と判断するだけのことはあるわね。だから真っ先に潰したのに……なんで、なんで生きているのよ⁉︎」

「確かに私は瀕死になった。だが、聖女の治癒魔法で救われたからな」

「聖女? そんなはずはないわ。ミラベルは教会から出ないよう言い含めておいたはずよ。アレは私の話ならなんでも信じるのよ」

「お前の駒だった女の話ではない」

「まさか……」

侍女が私の影に隠れるよう佇んでいたティナに視線を向け、信じられないと言わんばかりに目を見開く。

「想像の通りだ。ティナがチカラを取り戻したのだ。そちらも想定外だったのだろう?」

「くっ、なんてこと。治癒魔法が復活するなんて想定外も想定外よ! そもそも本来は聖女も殺すつもりだったのに。だから予定が狂わされたんだわ」

悔しそうに唇を噛み締める侍女は、そこで聞き捨てならない台詞を吐き出した。

 ……ティナを殺すつもりだっただと?

ピクリと反応した私はどういうことかと侍女を尋問する。すると、侍女はもう逃げ場がないからか真相をペラペラと得意げに話し始めた。

「毒薬を飲み物に混入して殺そうとしたのよ。なのに、なぜかそれが聖女に効かなくて。こっちも驚いたわ。でも次はどんな手を使うか考えていたら、翌日に治癒魔法が使えなくなったって聞いてまさかの展開だったわよ」

なんとこの女は実際にティナに毒を盛っていたという。もしもその毒が予定通り効いていれば、私はティナと出会うことすらなかったのだ。
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