追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
回避された出来事ではあるが、想像すると薄寒い気持ちになる。チラリとティナを横目で窺えば、衝撃の事実に手で口を押さえていた。

 ……ティナの持つ強力な魔法のチカラによって自浄作用が働き、体内に入った毒を浄化したのかもしれないな。

あくまで推測ではあるが、これも治癒魔法使いの能力の一つなのかもしれない。そもそも治癒魔法は御伽話のような存在ゆえ、わかっていない点が多いのだ。

「魔力量が桁違いに多い聖女は邪魔な存在だったから消す予定だったけど、治癒魔法が使えなくなったっていうんなら殺す必要はないと思ったのよ。目的は達成したわけだから。でもその判断ミスがすべてを台無しにしたってわけね。悔やんでも悔やみきれないわ」

再び侍女はギリギリと歯軋りする。

見当違いにもティナを睨み始めたので、私は侍女の視線を遮るようティナを背後に隠した。

そして意識を逸らさせるため、さらなる質問を投げかけ真相を追求する。

「それらすべてをミラベル嬢を実行犯としてお前が背後から操っていたわけだな?」

「ええ、そうよ。ミラベルは単純な性格だから唆すのが簡単だったわ。そもそも聖女でもないのにね。笑っちゃう」

 ……聖女ではない?

再び侍女は聞き流すわけにはいかない言葉を零した。その点を踏み込んで問えば、彼女は自慢げな様子で衝撃の真実を饒舌に語り出した。

「ふふふっ。我が国はね、長年の研究の末、ついに治癒魔法を使える道具の開発に成功したのよ! 大量の魔力を要するから数は量産できず、まだ三つしか存在しないけどね。その一つを今回の作戦のためにミラベルに与えたの」

「治癒魔法を使える道具だと……?」

「驚いたでしょう? 我が国は十年前の敗戦以降、いつか憎きウィットモア王国を下すためにずっとあらゆる手を尽くしてきたってわけよ! 悔しいのはそちらの国にも聖女が現れ、しかも我が国で開発した道具とは比べ物にならない威力の治癒魔法を使えるってことよね」
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