追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした

22. 二十年前の真相

 ……まさか治癒魔法のチカラさえ与えられ、ミラベル様は知らずに操られていただなんて……。

自ら希望して同行したが、侍女から聞かされた真実は衝撃の連続だった。

自分が毒殺されそうになっていたことや、治癒魔法を使える道具がサラバン帝国で開発されていたことも驚きだったが、それ以上にミラベル様の身に起こった事柄は驚愕に値する。

信頼していた侍女、さらには実父に利用されていたと知って胸が締め付けられた。

「大丈夫か? ここへは無理して同行する必要はないと思うが……」

わたしが思い詰めた表情をしていると、レイビス様がそっと顔を覗き込んできた。

これから諸悪の根源であるネイビア侯爵の邸宅に押し入るのだ。今まさに玄関口を前にしている。

侍女の捕縛し、フィアストン領の牢へ連行し終えた後、わたし達はレイビス様の瞬間移動魔法で王都へ来ていた。

王宮で国王陛下や王妃殿下、アルヴィン王太子殿下、宰相ラシュート公爵にお目通りし、一通りの真相を報告した上で、今ネイビア侯爵の捕縛に動いているのである。

ここまで明確な証拠や証言が揃ったならば、もう言い逃れはできないだろうという王家の判断だった。

今この場にはレイビス様、騎士団長様、そしてわたしの三人がいる。もちろん魔法師団や騎士団の団員も後方支援とした邸宅の周辺をひっそり囲んでいた。

場違いにもわたしがこの場にいるわけだが、これはわたしが希望したからだ。

ミラベル様を聖女に仕立てて操るという所業をしたネイビア侯爵の行く末をこの目で見届けたかった。

わたしの同行が認められたのは、もしもに備えて治癒魔法は有効であると王家が判断してくれたゆえであった。

 ……いけない。自分から同行を申し出ておいて、この期に及んで心配させるなんて。
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