追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした

23. 本物聖女と魔法師団長の新たな関係

長い長い一日だった。

魔物の暴走発生によって浴場の処置室が戦場と化し手当てに追われ、一息つけるかと思えば瀕死の重傷に陥ったレイビス様の姿に動揺し。

もうダメかと心が折れそうになった時に奇跡的に治癒魔法が発動して想う人を救うことができた。

さらになぜ突然治癒魔法を取り戻せたのか不思議がっていたところ、レイビス様もわたしに好意を持っていると思わぬ一言を告げられてドキドキして。

そのときめき冷めやらぬ間に、ミラベル様、工作員だった侍女、ネイビア侯爵の口から衝撃の真相が次々に語られて驚きの連続だった。

これがたった一日の中で起こったのだ。
なんて濃密で心的負担が大きい日だろうか。

だが、まだその一日は終わっていない。

今わたしは以前デートで来た湖にレイビス様と二人きりだった。

先日はミルキーブルーの湖が美しい眺めだったが、夕日が落ちかけているこの時間、湖は橙色に染まりつつある。

しかしこの前と変わらずルピナスだけは甘い香りを漂わせていた。

「王宮に戻らなくてよろしいのですか?」

「ああ、問題ない。後は王家の役目だ。アルヴィンが上手くやるだろう。宮廷魔術師団も今日は一日よく働いたから団員へは休息を伝達してある」

色々あった後なのにわたしと一緒にいて大丈夫なのだろうかと心配だったため、この返事を聞き、わたしはホッと息を吐いた。

 ……それにしてもレイビス様はどうしたのかしら?

ネイビア侯爵邸から引き揚げた後、レイビス様からここへ行こうと誘われたわけだが、理由は聞かされていない。

二人きりという状況にこそばゆい気持ちを感じる一方、これから何が起こるのか不安になる気持ちもひしめく。

「おそらく明日からはまた本件の事後処理でかなり忙しくなる。なかなか時間が取れないだろうから、その前にティナとは話しておきたいと思って」

「話、ですか?」

「ああ。ティナはニコライ司教が最後に言った話はどう思った?」
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