追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「ふふっ。もう次の研究の話ですか? でも明日からしばらくお忙しいのですから難しいですね」

「まあ、それはそうだが。ただ、その研究は別に今すぐでなくても構わない。ティナが協力すると約束してくれるなら」

くすくすと小さく笑いながらレイビス様を見上げれば、冗談を言っている雰囲気ではなく、思いのほか真っ直ぐな瞳を向けられていることに気がついた。

意外な真剣さにわたしは目を瞬く。

「私が言いたい意味がわからないか?」

「えっ……?」

「つまり私と結婚してほしいと告げたつもりなんだが」

「えっ⁉︎」

 ……結婚⁉︎ 研究の話ではなかったの⁉︎

レイビス様の予想外の一言に胸が早鐘を打つ。

どう返してよいかわからず、もごもこと口ごもってしまった。

「治癒魔法が発動した考察を述べた時にも伝えたが、私はティナに好意を寄せている。世間一般には、『好きだ』とか『愛している』とか言うアレだな」

「……ッ!」

そんなわたしにレイビス様はわかりやすく噛み砕いて説明するかのように自身の考えを話し始めた。

その一言目にいきなり『好き』、『愛している』という愛の言葉が含まれていて、わたしは頬を染めながら息を呑んだ。

「これまでは仮説を検証するために恋人行為を実験してきた。つまり私達の関係は『研究者と被験体』だ」

レイビス様の言う通りだ。わたし達はそれ以上でもそれ以下でもなかった。

いくら恋人同士のように親密な行為を重ねようと、あくまでそれは実験。本物ではなかったのだ。

わたしは同意するようにこくりと首を縦に振る。

「この関係を変えたいと私は思っている。『研究者と被験体』から新たな関係に」

「はい」

この言葉にも同意だ。
取り組んでいた研究の成果が出た以上、もう実験の必要はない。それにレイビス様に恋心を抱いてしまった以上、今のままではいられないとも思う。

だから再びわたしは同意を示すために頷いた。
< 135 / 141 >

この作品をシェア

pagetop