追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした

エピローグ

一連の騒動後、王家の行動は迅速だった。

サラバン帝国が魔物をけしかけて侵攻してきた事実を始め、ネイビア侯爵と教会が敵と通じて手引きをしていた罪、ミラベル様が実行犯として関与していた罪を大々的に公表した。

同時に二十年前に起こったペッレルヴォ・エイジャーの冤罪も発表され、わたしの父は時を経て名誉挽回に至った。

ニコライ司教の強い希望が叶った形だ。これはおそらく王家なりの配慮であろうと思う。

実はわたしたちがネイビア侯爵の捕縛に動いていた頃、時を同じくして王家は騎士団の一部を率いて王都教会本部へ足を踏み入れていた。

教皇様を筆頭に上層部はほぼ全員今回の件に関与しており、教会幹部は王家によって一掃されることとなった。

教会の腐敗ぶりは目に余るものがあるが、とはいえ王国民にとっては心の拠り所として機能しており、特に医療面ではなくてはならない存在だ。

簡単に取り潰すという決定はさすがの王家も選択できなかったらしい。

そこで白羽の矢が立ったのがニコライ司教だ。

ニコライ司教は今回の騒動に不関与。むしろ怪我人の治療に心を砕いた人望者として知られている。

そういった経緯があり、なんとニコライ司教が教皇に就任し、健全な教会運営を担っていくことになった。

これまで断絶ぎみであった王家とも今後は頻繁に意見交換するなど、民のために協力していく関係を構築する予定だという。

つまり、これから良好な関係を築いていきたい相手であるニコライ司教の希望を王家が受け入れ、歩み寄った形だ。

そしてもう一つ。 
公表を後押しした背景として、わたしの存在もあったのだろうと思う。

わたしが治癒魔法を取り戻したことや、魔物の襲撃時に多くの怪我人を癒した事実は広く知れ渡っている。救国の聖女として名前が一人歩きしている状態だ。

その功労者の実父を罪人扱いのままにしておくのは忍びないと王家は判断したようだった。後日王宮で謁見した際に、直々に二十年前について謝罪までしていただいた。

わたしとしてはこの件で王家にわだかまりはない。むしろ多大な気遣いに感謝している。
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