追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「名誉国民になられたというのに、こうして頻繁に教会で手伝ってくださって助かっています」

「ニコライ様こそ教皇になられたのに、こんなに現場に出られてよいのですか?」

「机上ではわからないことも多いですからね。人々と直接対話する時間は大切です」

お互い立場が変わっても、志や行動は以前と変わらない。私たちは同じ使命感を抱える同志として顔を見合わせて微笑みを零した。

その時、目の前の景色がゆらゆらと一瞬揺らいだ。

「ティナ。迎えに来た」

先程まで誰もいなかった空間に、わたしの愛する夫が颯爽と現れる。

ちょうど最後の人の治癒を終えたわたしは、ニコライ教皇に挨拶して、夫の手を取った。

たちまち景色が切り替わり、瞬く間に王都の新居に到着する。夫婦の私室に直接飛んだため、この場には使用人もおらず二人きりだ。

「今日はお仕事早かったのですね」

「ああ、さっさと終わらせた。周りも私が新婚だから気を利かせてくれたんだろう。サウロとかな」

「ふふっ、目端のきくサウロ様らしいですね」

わたしが二人のやりとりを想像して小さく笑っていると、急に体がふわりと空中に浮いた。

なにごとかと思えば、レイビス様がわたしを横抱きにしている。そしてそのまま寝台の方へ歩き出した。

「えっ?」

「せっかく早めに帰宅したんだ。夕食までまだ時間がある。実験をするとしよう」

寝台にそっと沈められたわたしの上にレイビス様が覆い被さり、ぴったりと唇を塞ぐ。

夫となったレイビス様との実験――それは貴族と平民の間にできた子は治癒魔法を持つのかという例の仮説検証だ。

さらに治癒魔法という謎多き奇跡のチカラの全容解明に興味を持つレイビス様は、口づけの先にある行為との因果関係も研究対象にし始めた。

「んっ……」

湿った感触が唇から首筋へと滑り降りていく。

情欲の光を宿したエメラルドの瞳に見つめられ、胸の高鳴りが止まらない。

わたしたちの実験は、夫婦となり次のステージへと移り変わった。

この甘やかな実験はきっと生涯続くことになるだろう。

なにしろわたしの愛する夫は、誰よりも研究熱心な天才魔法師様なのだから。



END
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