追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
昔馴染みだからこその気やすさでリキャルドが私を揶揄う。

騎士団長として職務はしっかり遂行するリキャルドだが、私的な場でひとたび口を開けば女の話ばかりで若干うんざりする。

「そういうリキャルドだって結婚してないだろ。人のこと言えないと思うけどな」

「レイビスの言う通りだよ。私は二大公爵家の子息には、と先程言ったんだ。つまりラシュート公爵家の次男であるリキャルドにも向けた言葉だったんだけどなぁ」

「分かってるって。でも俺はいいや。まだまだ色んな令嬢達と遊びたいし。世の中には美女が多くて一人には絞れないんだわ。それに俺の場合は次期公爵かつ次期宰相の兄がいるから問題ないしな」

自分への結婚勧告はするりと受け流してリキャルドは得意げに笑う。

女好きで華々しく浮き名を流しているのはあいかわらずのようだ。

だが、これでいてラシュート公爵家の者として相手の女の見極めはきちんとしており、綺麗に遊ぶから誰も強くは咎めない。

その辺りのバランス感覚が絶妙なのがリキャルドだった。


「美女といえば、チラッと耳にしたところ、その追放された元聖女ってなかなかだったらしいな。アルヴィンは見たことあるのか?」

「数年前に会ったことはあるよ。確かに整った顔立ちの、清純な雰囲気の美人だったね」

「その元聖女って、教会を追い出された後、今どうしてるか知ってるか?」

思うところのあった私は二人の会話に加わり元聖女の所在を尋ねてみた。

すると何を勘違いしたのかリキャルドがニヤリと口角を上げる。

「もしや、美人だと聞いてレイビスは元聖女に興味を持ったのか?」

「興味はある。だが私の興味はあくまでも“治癒魔法を使えなくなった聖女”だ。言うまでもなく研究対象としてな。今までは治癒魔法の謎を解き明かしたくても教会に囲われていて機会がなかったが、教会と関係が切れたのなら尚更都合がいい」

「なーんだ。結局研究かよ」

期待外れというようにわざとらしく肩をすくめるリキャルドをよそに、私は情報を持っていそうなアルヴィンに視線を向けた。

しかし、残念ながらアルヴィンも元聖女の現況は知らないらしい。

教会側も追放後については感知していないという。

 ……まあ、調べようと思えばできなくはないな。探知魔術を応用すれば可能だろうし。

そう頭の中で算段をつけていると、突然アルヴィンが王太子としての顔に切り替わり、真剣な眼差しで私に問いかける。
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