追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
自分のスタンスを告げながら、私は最後にチラリとアルヴィンを見やる。
どうしても一言釘を刺しておきたいことがあったからだ。
「……その元聖女を王家に取り込む手伝いはしないからな。それを望むならアルヴィン自らがやってくれ。あくまでも私の興味は研究。そして公爵家の人間として、戦時に備えて治癒魔法を取り戻すことだ」
「レイビスには敵わないな。本音を読み取られていたね。うん、分かってる。レイビスはただいつも通り研究に没頭してくれればいいよ」
「んん? なんだ? どういう意味だ?」
私の言葉にアルヴィンはやや気まづそうに頭を掻き、リキャルドは「訳が分からん」と私とアルヴィンを忙しなく交互に見た。
……やはり王家は聖女を取り込みたいのだな。ここ数年、教会が力を持ちすぎているから無理もない。
神の教えを説く教会だが、治癒魔法を持つ聖女の存在を全面に打ち出すようになってから急激に影響力を増していた。
治癒を武器に国家に対しても強気に出られる立場になったのだ。
今のところ教会と王家は表立って明確に対立していないが、王家にとって油断ならない存在だろう。
その教会が二人のうち一人の聖女を自ら追放したのだ。
治癒魔法を使えなくなった――つまり役に立たなくなったゆえの処遇だろうが、もしそのチカラが再び手に戻るならば?
もはや教会の息がかからぬ聖女を、再び教会に取り込まれる前に王家側に欲しいと思うのも自然な流れだ。
その展開も見越した上での私への依頼だったのだろう。
……公爵家の人間として責務は果たすが、教会と王家の権力闘争には巻き込まれたくはない。私はただ興味のある研究をとことんできればいいのだから。
そんな私の考えはきっと聡いアルヴィンなら察している。
アルヴィンはあっさり私からの指摘を認めると、研究だけしてくれれば良いと述べたのだった。
その言葉通り、数日後にアルヴィンは元聖女の行方を調べた結果を報せてきた。
驚いたことにその行方というのは、私の父が領主として治めるフィアストン領だった。
そこなら私もなにかと動きやすいし好都合だ。
どうしても一言釘を刺しておきたいことがあったからだ。
「……その元聖女を王家に取り込む手伝いはしないからな。それを望むならアルヴィン自らがやってくれ。あくまでも私の興味は研究。そして公爵家の人間として、戦時に備えて治癒魔法を取り戻すことだ」
「レイビスには敵わないな。本音を読み取られていたね。うん、分かってる。レイビスはただいつも通り研究に没頭してくれればいいよ」
「んん? なんだ? どういう意味だ?」
私の言葉にアルヴィンはやや気まづそうに頭を掻き、リキャルドは「訳が分からん」と私とアルヴィンを忙しなく交互に見た。
……やはり王家は聖女を取り込みたいのだな。ここ数年、教会が力を持ちすぎているから無理もない。
神の教えを説く教会だが、治癒魔法を持つ聖女の存在を全面に打ち出すようになってから急激に影響力を増していた。
治癒を武器に国家に対しても強気に出られる立場になったのだ。
今のところ教会と王家は表立って明確に対立していないが、王家にとって油断ならない存在だろう。
その教会が二人のうち一人の聖女を自ら追放したのだ。
治癒魔法を使えなくなった――つまり役に立たなくなったゆえの処遇だろうが、もしそのチカラが再び手に戻るならば?
もはや教会の息がかからぬ聖女を、再び教会に取り込まれる前に王家側に欲しいと思うのも自然な流れだ。
その展開も見越した上での私への依頼だったのだろう。
……公爵家の人間として責務は果たすが、教会と王家の権力闘争には巻き込まれたくはない。私はただ興味のある研究をとことんできればいいのだから。
そんな私の考えはきっと聡いアルヴィンなら察している。
アルヴィンはあっさり私からの指摘を認めると、研究だけしてくれれば良いと述べたのだった。
その言葉通り、数日後にアルヴィンは元聖女の行方を調べた結果を報せてきた。
驚いたことにその行方というのは、私の父が領主として治めるフィアストン領だった。
そこなら私もなにかと動きやすいし好都合だ。