追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「実はワシは元医療神官なのじゃ。だが、教会の対応に我慢ならなくなってのう。ここはワシが教会を辞めて十五年前くらいに作ったのじゃ。十年前に聖女が現れてからは、より一層教会は寄付を求めるようになりおって。ここに駆け込んでくる者たちも増えておるんじゃよ」
……そんな。教会が治癒を与える人を選別していたなんて。知らなかった……。
聖女として活動していた時、わたしは教会の神官に指示された部屋で待機し、連れて来られた患者を治癒していた。
つまりわたしの治癒を受けていた人たちは、教会へ寄付を納めた、教会によって選別された人々だったのだろう。
困っている人、苦しんでいる人を助けたという事実に変わりはない。
だけど、本当に治癒魔法を必要としていた人たちに手を差し伸べられていなかったかもと思うと、胸をギュッと締めつけられる。
後悔にも似たやるせない気持ちが押し寄せてきた。
「ところでお嬢さん。もし良かったら、今後もここでワシを手伝ってくれんかのう?」
「えっ、わたしがですか……⁉︎」
思わぬ真実を知り、自分の視野の狭さと世間知らずさに嘆息していると、ふいにラモン先生から驚きの提案を受けた。
わたしはビックリして目を瞬く。
治癒魔法を使えた頃ならいざ知らず、今のわたしは何もできないただの役立たずなのに。
「ですが、わたしは本格的な治療はできないですし、お役に立たないと思いますが……」
「なにを言うておる。なかなか怪我や病気で苦しむ者を前にして落ち着いて対応できる者は少ないのじゃ。お嬢さんは血にも動揺せず、的確に応急処置をしておったわい。まだ若いのに立派なもんじゃよ」
……立派? わたしが……?
ラモン先生からの思いがけない言葉に、わたしは目頭が熱くなる。
治癒魔法という奇跡のチカラを失ってしまった聖女ではないわたしでも、人の役に立てるのだと思えば、嬉しくして胸が温かくなった。
聖女時代に魔法での治癒活動をする傍ら、もしもの時のためにと魔法を使わない処置方法を医療神官から学んでおいたことがこんなふうに役に立つとは。
……教会で過ごした時間も無駄じゃなかったって思っていいのかな。
もとより人の役に立てるのから断る理由はない。わたしはラモン先生からの申し出を引き受けることにした。
こうして、フィアストン領の大衆浴場では、教会へ行けないような貧しい暮らしの人々を、教会で教皇の次に高い地位にあった元聖女が救いの手を差し伸べるようになったのだった。
……そんな。教会が治癒を与える人を選別していたなんて。知らなかった……。
聖女として活動していた時、わたしは教会の神官に指示された部屋で待機し、連れて来られた患者を治癒していた。
つまりわたしの治癒を受けていた人たちは、教会へ寄付を納めた、教会によって選別された人々だったのだろう。
困っている人、苦しんでいる人を助けたという事実に変わりはない。
だけど、本当に治癒魔法を必要としていた人たちに手を差し伸べられていなかったかもと思うと、胸をギュッと締めつけられる。
後悔にも似たやるせない気持ちが押し寄せてきた。
「ところでお嬢さん。もし良かったら、今後もここでワシを手伝ってくれんかのう?」
「えっ、わたしがですか……⁉︎」
思わぬ真実を知り、自分の視野の狭さと世間知らずさに嘆息していると、ふいにラモン先生から驚きの提案を受けた。
わたしはビックリして目を瞬く。
治癒魔法を使えた頃ならいざ知らず、今のわたしは何もできないただの役立たずなのに。
「ですが、わたしは本格的な治療はできないですし、お役に立たないと思いますが……」
「なにを言うておる。なかなか怪我や病気で苦しむ者を前にして落ち着いて対応できる者は少ないのじゃ。お嬢さんは血にも動揺せず、的確に応急処置をしておったわい。まだ若いのに立派なもんじゃよ」
……立派? わたしが……?
ラモン先生からの思いがけない言葉に、わたしは目頭が熱くなる。
治癒魔法という奇跡のチカラを失ってしまった聖女ではないわたしでも、人の役に立てるのだと思えば、嬉しくして胸が温かくなった。
聖女時代に魔法での治癒活動をする傍ら、もしもの時のためにと魔法を使わない処置方法を医療神官から学んでおいたことがこんなふうに役に立つとは。
……教会で過ごした時間も無駄じゃなかったって思っていいのかな。
もとより人の役に立てるのから断る理由はない。わたしはラモン先生からの申し出を引き受けることにした。
こうして、フィアストン領の大衆浴場では、教会へ行けないような貧しい暮らしの人々を、教会で教皇の次に高い地位にあった元聖女が救いの手を差し伸べるようになったのだった。