追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
だが、残念なことに焦れば焦るほど手のひらはじっとり汗ばんできた。

「ん? 汗をかいているのか?」

そしてとうとうレイビス様に気づかれてしまい、指摘までされてしまった。

穴があったら入りたい気持ちだ。

「なるほど。少し変化が現れたな。これは治癒魔法が再び発現する兆しか?」

ただ恥ずかしいだけなのに、レイビス様はわたしのこの反応を好反応と受け取ったようだ。

繋いだ手をそのまま持ち上げて、目の高さまで持ってくると、ぶつぶつ考察をつぶやきながら真剣な眼差しでまじまじと観察し始めた。

汗ばんだ手をじっくり眺められ、言い知れぬ羞恥の情に駆られる。

わたしの顔は今きっと真っ赤に違いない。

「もう少し接触を増やしてみるか」

あまりの恥ずかしさから、なかば今の状況から目を逸らしていたところ、ふいにまた不穏な言葉が耳に届く。

わたしが「えっ?」と思った刹那、レイビス様のもう片方の手が近づいてきた。

そしてわたしの頬にあてがわれる。

ひんやりとした感触が今度は頬に感じられ、またビクリと小さく体が揺れた。

「頬も温かいな。それに少し赤くないか?」

「……………」

「どうだ? なにか変化は?」

「……あ、ありません」

片手で手を握られ、もう片手で頬に触れられ、二箇所の接触によりわたしの心臓は激しく脈打っている。

こんなにこちらは心を乱されているのに、平然と涼しい顔をしたレイビス様がいっそ憎らしい。

そんな少しだけ恨めしい気持ちが湧いてきて、わたしはレイビス様を少しばかり()めつけた。

だけど、目が合った瞬間、深く後悔した。

美しいエメラルドの瞳に絡めとられ、じっと見つめ返されてしまったからだ。

「変化はないと言うが、やはり顔が赤いな。ティナは肌が白いから余計に目立つ」

「レ、レイビス様の気のせいだと思います」

「いや、この前もティナの顔はじっくり観察したから間違いない。体調でも悪いのか? 熱があるとか」

「だ、大丈夫です」
< 35 / 141 >

この作品をシェア

pagetop