追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
よく分からないと疑問符を浮かべるアルヴィンに、私は仮説を始めこれまでの研究の進捗などを手短に説明した。

「……つまり、レイビスに恋人ができたわけではなく、元聖女ティナと仮説検証のために恋人ごっこをしてるって理解であってる?」

「ああ、その通りだ」

事情を把握したアルヴィンは、なんとも言えない表情になり、肩をすくめ、私に視線を向けた。

「なんていうか……レイビスらしくはあるね。興味を持ったことに対してなら一直線というか、手段を問わないというか。よく元聖女が協力してくれたね……?」

「まあな。協力を得るためにこちらも報酬を用意するなど手は尽くしたからな」

「ああ、そう。うん、分かった。……それで質問は次の段階に進むにあたり何がいいかってことだったよね?」

ここまで前提の説明で時間を食ってしまったが、やっと聞きたかった核心部分だ。

私は軽く頷き、アルヴィンに再び尋ねる。

「何か考えはあるか?」

「そうだなぁ、やっぱりデートとかじゃない?」

「デート?」

「二人で外へ出掛けて、会話を交わして、心の距離を近づけるんだよ。スキンシップも恋人らしい行為ではあるけど、やっぱり心の触れ合いが大切だと思うな。遊びの相手との違いでもあると思うしね」

「なるほど、心の触れ合いか」

自分の引き出しにはなかった意見だ。
遊びの相手と対比して語られると、説得力が増す。

まったく反応が見られず行き詰まっている今、心の触れ合いというこれまでとまったく違う方向性の行為は試してみる価値がありそうだ。次の段階として最適だろう。

「僕も妻とは結婚前にお忍びで城下へデートに行き、心を交わし合ったからね。あ、そうそう。デート中、女性を褒めるのも大事だよ」

「褒める?」

「レイビスは基本的に必要なことしか話さないでしょ? それに無表情で何考えてるのか相手は分かりづらいだろうし。だからあえて言葉にするよう心がけた方がいいと思うよ。それが褒め言葉なら女性も喜ぶだろうし、雰囲気も良くなるはずだからね」

さらにアルヴィンから経験に基づく助言を与えられ、私は忘れないようしっかりと頭に留めた。

さっそく次の検証で試してみる心づもりだ。
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