追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「さて、それじゃあレイビスからの質問にも答え終えたことだし、そろそろ本題に入るね」

話にひと段落ついたところで、アルヴィンはテーブルの上にあったティーカップに口をつけ一息つくと、そう切り出した。

打って変わって真剣な面持ちを私に向ける。

「実は僕達の周囲にサラバン帝国の手の者がいる可能性がある」

「それは……」

告げられた情報に息を呑む。

面会の場に私室を指定されたのも納得だ。それほど機密性の高い話である。

「この前サラバン帝国の動向にきな臭さがあると話たのは覚えてる?」

「ああ、もちろん。父上や弟とも話し合って、あの後すぐにフィアストン領にある国境の警備は強化した。騎士の配備も見直し済みだ」

「ありがとう。国境領を守るフィアストン公爵家が備えてくれているのは心強いよ。ただね、敵は外からだけではないかもしれないんだ」

「国内の貴族に密通者がいるかもしれない、と言いたいのか?」

「その可能性が否めなくてね。というのも実際に過去の事例があるんだよ」

そしてアルヴィンは以前に起こった事件を詳説(しょうせつ)し出した。

サラバン帝国とは今から十年前に大戦があったのは周知の事実だが、その戦争のさらに十年前に密通の容疑をかけられて投獄された者がいたそうだ。

若くして伯爵家を継いだ青年貴族だったという。彼はサラバン帝国に国内の情報を流すほか、敵国の工作員を侵入させる手引きまでしていたそうだ。

だが、その悪行が露呈し、サラバン帝国の手の者は一掃された。

これにより、あともう少しというところで侵略計画を丸潰しにされてしまった帝国は、一旦手を引き大人しくなったらしい。
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