追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「……すみません、話が脱線してしまって。どうぞお話の続きをしてください」

「サラバン帝国に関する内容だが、話して大丈夫か……?」

「はい、わたしは大丈夫です」

わたしの過去の出来事や両親について話が飛んでしまっていたが、冒頭にレイビス様は「相談がある」と言っていたはずだ。

いつもと様子が違ったレイビス様が何を考えているのかを知るためには、話を先に進める必要があるだろう。

わたしの心情を慮るように問いかけるレイビス様にわたしは頷き、先を促した。

いまだにわたしを抱きしめたままのレイビス様の腕に少しだけ力がこもる。

「わかった、では先程の話に戻る。ティナの懸念通り、再び戦乱が起きる可能性は高いと王家や国の上層部は考えている。……そこで重要になってくるのが治癒魔法だ」

「……戦争になった時にどんな怪我でも治せるチカラは武器になるということですね」

「ああ、その通りだ。今もミラベル嬢が聖女として存在してはいるが、ティナの魔力量と比較すれば正直心許ない。だからこそ、君が治癒魔法を再び使えるようになれば心強いと思っている」

「救える命があるのならば、わたしも助けたいです。……ただ、今のわたしには……」

「わかっている。そこで、だ」

自分の不甲斐なさに気落ちするわたしに、エメラルドの瞳が向けられた。

そしてここからが本題だというふうに、一度言葉が切られる。

「今行っている実験の速度を上げていきたいと思う」

「速度を上げる、ですか……?」

「以前、君は言っただろう? 恋人同士の行為に慣れておらず心に負担がかかるため、じっくり進めてほしいと。私としてはその約束を遵守してきたつもりだが、時間的猶予がなくなってきた今、それを撤回させてほしい」

 ……えっ、それはつまり……⁉︎

「本来はしばらくデートを重ねる方向で考えていたのだが、あまりのんびりしている暇はなさそうだ」

ということは、次の段階に進むという意味だろう。

そしてこれからは待ったなしで、さらなる恋人行為を試す実験が進行していくことになるに違いない。
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