追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「……ミラベル様、お久しぶりです。どうしてこちらへ?」
「フィアストン領の教会に治癒に来たら、街中にある大衆浴場に聖女のような女がいるって噂を聞いたのよ。本物の聖女であるあたくしがいるというのに不敬すぎる話でしょう? 聖女を騙る女が自惚れないようあたくしがきっちり教育してあげなければと思ってね」
つまり、自分以外に聖女と噂される存在が許せなかったという意味だろう。
噂については全く知らなかったが、なんの因果かそれがミラベル様の耳に入って、こうして再び顔を合わす事態になるとは。
「でも、まさかその噂の聖女があなたとはね。こ〜んな小汚いところで貧乏人を治癒しているの? 高貴な身分のあたくしと違ってただの庶民のあなたにはお似合いだわね! おほほほほ」
「ミラベル様、おやめください。ここも立派な処置室です」
高笑いするミラベル様をニコライ司教がなんとか窘めようとしている。
その一方でニコライ司教はわたしやラモン先生に対して申し訳なさそうな顔を向けた。
立場的に聖女であるミラベル様の方が上のため、強く出られないのが心苦しいのだろう。
「聖女と崇められていい気にならないようにね? こんなところでちょっとばかり処置ができたからって、本物には遠く及ばないですもの」
「……わかっています」
「それならいいわ。さてと、こんな汚い場所にいたらあたくしまで穢れてしまうわ。病気にでもなってしまいそうよ」
ここまで一切言い返さず、大人しくしていたわたしだったが、最後のこの言葉だけは腹に据えかねた。
……わたしを蔑むだけならまだいいわ。でも処置室を馬鹿にするのは許せない。
ここはラモン先生が志を持って開設した場所だ。教会へ治癒に行けない貧困に喘ぐ人々の拠り所である。
しかも治安維持の一助になると領主様も援助してくれている意義ある処置室なのだ。
「……ミラベル様、最後の言葉は撤回していただけますか?」
「はぁ?」
「ここは人々を癒すための場所です。病気になどなるはずがございません」
元同僚とはいえ、今は侯爵令嬢と平民という明確な身分差が存在することは理解している。
平民が高位貴族に歯向かうなどあってはならないことだ。
だけど、それでもわたしは我慢できなかった。
「フィアストン領の教会に治癒に来たら、街中にある大衆浴場に聖女のような女がいるって噂を聞いたのよ。本物の聖女であるあたくしがいるというのに不敬すぎる話でしょう? 聖女を騙る女が自惚れないようあたくしがきっちり教育してあげなければと思ってね」
つまり、自分以外に聖女と噂される存在が許せなかったという意味だろう。
噂については全く知らなかったが、なんの因果かそれがミラベル様の耳に入って、こうして再び顔を合わす事態になるとは。
「でも、まさかその噂の聖女があなたとはね。こ〜んな小汚いところで貧乏人を治癒しているの? 高貴な身分のあたくしと違ってただの庶民のあなたにはお似合いだわね! おほほほほ」
「ミラベル様、おやめください。ここも立派な処置室です」
高笑いするミラベル様をニコライ司教がなんとか窘めようとしている。
その一方でニコライ司教はわたしやラモン先生に対して申し訳なさそうな顔を向けた。
立場的に聖女であるミラベル様の方が上のため、強く出られないのが心苦しいのだろう。
「聖女と崇められていい気にならないようにね? こんなところでちょっとばかり処置ができたからって、本物には遠く及ばないですもの」
「……わかっています」
「それならいいわ。さてと、こんな汚い場所にいたらあたくしまで穢れてしまうわ。病気にでもなってしまいそうよ」
ここまで一切言い返さず、大人しくしていたわたしだったが、最後のこの言葉だけは腹に据えかねた。
……わたしを蔑むだけならまだいいわ。でも処置室を馬鹿にするのは許せない。
ここはラモン先生が志を持って開設した場所だ。教会へ治癒に行けない貧困に喘ぐ人々の拠り所である。
しかも治安維持の一助になると領主様も援助してくれている意義ある処置室なのだ。
「……ミラベル様、最後の言葉は撤回していただけますか?」
「はぁ?」
「ここは人々を癒すための場所です。病気になどなるはずがございません」
元同僚とはいえ、今は侯爵令嬢と平民という明確な身分差が存在することは理解している。
平民が高位貴族に歯向かうなどあってはならないことだ。
だけど、それでもわたしは我慢できなかった。