追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
ネイビア侯爵の前妻である兄姉の母は、由緒ある某侯爵家出身だ。対して、前妻亡き後に後妻として迎えられたミラベルの母は男爵家の出身であった。
その母も物心つく前には亡くなってしまっている。
そして貴族の中でもっとも爵位が低い男爵家の出である母を持つミラベルは、兄姉たちの中で見下されて育った。
同じネイビア侯爵家の子供であり、父は同じなのに、明らかに格下扱いをされていたのである。
父であるネイビア侯爵は宮廷での権力争いに執心するばかりで、もともと家のことに関心が薄い人だ。兄姉の態度を諌めるどころか、黙認していた。
なお、ミラベルは決して表立って虐げられていたわけではない。侯爵令嬢として相応しい扱いはされてきていた。
ただ、実の父親に顧みられず、腹違いの兄姉に腹の底で見下されていたことが影響し、身分の低さに対する強烈なコンプレックスを抱えるようになったのだ。
だからこそ、自分よりも身分が低い者に対しては、自分がされてきたように気高く強くあたる。
そして身分が低いはずなのにミラベルと同じ扱い、もしくは自分よりも上の扱いを周囲から受けるティナが心底憎らしかった。
その感情がミラベルを突き動かす。
「せっかくティナ様が教会を追放されて、ミラベル様にとって目障りなお方がいなくなったと思いましたのに。またミラベル様のお心を乱すなんてティナ様は本当に厄介な方ですね」
紅茶を飲むミラベルの傍に控えるオルガが、まるでミラベルの心を代弁するようにつぶやいた。
侍女のオルガはいつもこうだ。
こちらの気持ちを汲んでくれ、いつどんな時も共感してくれる。ミラベルが抱える兄姉に対する劣等感などにも理解を示して寄り添ってくれた。
オルガは聖女のチカラが発現した時に父が付けてくれた侍女のため、付き合いはまだ一年少々と長くはないが、今やミラベルにとってもっとも信頼する相手である。
「オルガの言う通りよ。追放後もあたくしに迷惑をかけばかりだわ」
「ティナ様のせいで、ミラベル様のお忙しさも増しましたものね」
香り高い紅茶での一息により、幾分怒りを和らげていたミラベルだったが、オルガの一言でまた不愉快さが込み上げてきた。
……そう、その通りだわ!
その母も物心つく前には亡くなってしまっている。
そして貴族の中でもっとも爵位が低い男爵家の出である母を持つミラベルは、兄姉たちの中で見下されて育った。
同じネイビア侯爵家の子供であり、父は同じなのに、明らかに格下扱いをされていたのである。
父であるネイビア侯爵は宮廷での権力争いに執心するばかりで、もともと家のことに関心が薄い人だ。兄姉の態度を諌めるどころか、黙認していた。
なお、ミラベルは決して表立って虐げられていたわけではない。侯爵令嬢として相応しい扱いはされてきていた。
ただ、実の父親に顧みられず、腹違いの兄姉に腹の底で見下されていたことが影響し、身分の低さに対する強烈なコンプレックスを抱えるようになったのだ。
だからこそ、自分よりも身分が低い者に対しては、自分がされてきたように気高く強くあたる。
そして身分が低いはずなのにミラベルと同じ扱い、もしくは自分よりも上の扱いを周囲から受けるティナが心底憎らしかった。
その感情がミラベルを突き動かす。
「せっかくティナ様が教会を追放されて、ミラベル様にとって目障りなお方がいなくなったと思いましたのに。またミラベル様のお心を乱すなんてティナ様は本当に厄介な方ですね」
紅茶を飲むミラベルの傍に控えるオルガが、まるでミラベルの心を代弁するようにつぶやいた。
侍女のオルガはいつもこうだ。
こちらの気持ちを汲んでくれ、いつどんな時も共感してくれる。ミラベルが抱える兄姉に対する劣等感などにも理解を示して寄り添ってくれた。
オルガは聖女のチカラが発現した時に父が付けてくれた侍女のため、付き合いはまだ一年少々と長くはないが、今やミラベルにとってもっとも信頼する相手である。
「オルガの言う通りよ。追放後もあたくしに迷惑をかけばかりだわ」
「ティナ様のせいで、ミラベル様のお忙しさも増しましたものね」
香り高い紅茶での一息により、幾分怒りを和らげていたミラベルだったが、オルガの一言でまた不愉快さが込み上げてきた。
……そう、その通りだわ!