追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
実はティナが教会を追放されてからというものの、ミラベルに求められることが激増しているのだ。

教会から平民の治癒まで指示されている。
今回のフィアストン領への遠出による治癒活動もそうだ。

なぜ尊いあたくしが庶民の治癒なんて対応しなければいけないのか?と拒否すれば、「教会の求心力が落ちる」と言われて良い顔をされない。

しかも神官達からは陰で「魔力量が少ないからな」と蔑まれる始末だ。

 ……本当になんなのよ! あの女がいなくなって、あたくしは唯一の聖女として君臨するはずだったのに!

教会でも神官達に内心見下されているようで、ミラベルは腹が立ってしょうがなかった。

「こんなにミラベル様は頑張っておられるのに……その間にティナ様はフィアストン公爵子息様と面識を得るなど好き勝手されているようで許せませんわ。先程はお会いしただけだと言い訳されていましたけど、侍女仲間は懇意にしていると言っていましたもの。ミラベル様が憧れているお方ですのに」

怒りの炎が点火しつつある中、さらにオルガが不快でたまらない事実を口にした。

 ……それよ! あの憎らしい女がレイビス様と懇意にしているなんてなんの冗談よ! 信じたくないわ!

レイビスといえば、全貴族令嬢の憧れの男性だ。皆がその妻の座を狙っている。

これ以上望むべくもない家柄の良さに加え、素晴らしい容姿と才能だ。あの美しい美貌で自分だけに甘く微笑んでほしいと願う令嬢は山程いる。

ただ、レイビスはそもそも夜会など出会いの場に姿を現すことがほぼない上に、近寄る女性に手厳しいと知れ渡っている。本人の無表情さも相まって、お近づきになるハードルが高く、遠巻きに憧れるだけの方というのが社交界での常識となっていた。

いまだに彼の妻の座は空位。噂される女性も現れてはいなかった。
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