追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「神官達の話を小耳に挟んだところ、フィアストン公爵子息様は王都ではなく、近頃フィアストン領にいらっしゃるようですよ」

「まあ! それは本当⁉︎」

「はい。きっとミラベル様が面会希望を出されたら会ってくださるはずです。なにしろ本物の、そして唯一の聖女でいらっしゃるんですから!」

オルガの励ましでミラベルはますます気持ちが昂ってきた。

今やティナへの怒りなど忘れ去り、頭の中はレイビスとの邂逅への期待一色だ。

嫌でたまらなかったフィアストン領への治癒活動も、今となっては指示を出してくれた教会に感謝したいくらいである。

「さっそくフィアストン公爵子息様への面会希望のお手紙を書かれてはどうですか?」

「ええ! そうするわ!」

善は急げとミラベルはソファーから立ち上がり、書机で手紙を綴る。

もしかしたらこの手紙を憧れのレイビスが直接目にするかもしれないと、女性らしい柔らかな文体を心掛けた。

「ミラベル様、お会いになる当日はこちらをぜひお使いになりませんか?」

「あら? これはなぁに?」

どこから持ってきたのかオルガは小さなガラス瓶を掲げ、それをミラベルに手渡す。

受け取ったミラベルはその小瓶を目の高さまで持ち上げて、じっと観察した。

小瓶の中には薄紫色の液体が入っており、ゆらゆらと揺れている。
 
「実はこちら、媚薬が配合された香水なんです」

「媚薬が配合されてるですって⁉︎」

「はい。この香水を纏えば、相手の男性を骨抜きにできるそうですよ。去る高貴な方も意中の相手を手に入れるために利用されたとか」
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