追放された聖女を待ち受けていたのは、エリート魔法師団長様との甘やかな実験の日々でした
「どこでこんなものを?」

「侍女仲間の主が密かに使っているものを分けて頂いたのです。秘匿情報のため具体的にどなたかはお伝えできませんが。でも私はどうしてもミラベル様の恋を応援したくて、いつかのためにと手に入れておいたのです」

オルガは少々後ろめたそうにしつつも、曇りなき真っ直ぐな瞳でミラベルを見つめる。

いつも自分に寄り添ってくれる侍女が「応援したい」と言ってくれて、ミラベルは心の底から嬉しかった。    

そしてその応援を形にすべく、自ら行動してこのようなものを入手してくれるとは、彼女の忠誠心の高さに胸を打たれた。

「皆さんも意中の相手に使われているみたいなので、ミラベル様もこれを纏ってフィアストン公爵子息様を虜にされてはいかがですか?」

「ええ、そうね。それがいいわ! オルガ、いつもあたくしのことを考えてくれてありがとう」


それから数日後。
ミラベルの出した面会希望は無事受理される。

憧れのレイビスとの面会が決まり、ミラベルの心はいまだかつてないほど華やいでいた。

当日なにを着ていくか悩みに悩み、広々とした貴賓室にはドレスが散乱する。

「やっぱり、これに決めたわ!」

それはドレスではなく、聖女を象徴する純白の修道服だった。この国でミラベルだけが纏える特別な代物である。

治癒魔法に興味のあるレイビスにはやはりこれが一番効果的だろうと考えた。

「ふふん♪」

ミラベルは当日着用するその白の衣を丁寧に棚に収納すると、今度は鏡の前で装飾品を選び始めた。

鏡の前にはあの小瓶が置かれており、窓から差し込まれた光が反射してキラキラと輝いていたのだった。
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